養育費の長期未払いに対する請求手順チェックリスト

1.未払いの養育費を請求したいと思ったらまず確認しましょう

確認すべきこと

  • 取り決めの有無について
  • 取り決め内容について
  • 成年年齢引下げの影響は?
  • 消滅時効について

取り決めの有無について

養育費の支払いを相手に求めるには、裁判所の調停調書や審判書、執行認諾付の公正証書などの公的文書(債務名義)が必要になります。口頭のみの約束では法的強制力がないため、早めに調停手続や公正証書の作成を検討しましょう。

公正証書がある場合の養育費の請求の仕方

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口約束しかしていなかったときの対処法

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取り決め内容の確認

金額・支払期間・支払方法などを把握し、公正証書があれば執行認諾条項付きかどうか確認します。合意内容と現状が合わない場合は、家庭裁判所での見直し手続(履行命令や再調停等)も考慮します。

強制執行をする場合、上記の債務名義に、執行文という「この債務名義により強制執行をすることができる」という文書を付けてもらう必要があります。これを「執行文の付与」といいます。公正証書の場合は、公正証書を作成した公証役場で、調停調書等の場合は、それを作成した家庭裁判所で執行文の付与を受けることができます。

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成年年齢引下げの影響

令和2年の成年年齢引下げにより18歳で成年になりますが、既存の取り決めは従来どおり有効です。たとえば「20歳まで」と決まっていれば、新たな手続なしに支払いを継続します。

消滅時効になっていませんか?

養育費請求権の消滅時効は、裁判上で確定した養育費は確定日から10年、それ以外(約束のみ等)は権利行使可能と知った時から5年です。時効が成立すると請求不可となるため、手続きを早めに開始してください。

未払いの養育費を請求するにあたり時効があります

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2. 相手方の情報を把握しましょう

  • 連絡先・居所確認:元配偶者の現住所・電話・メールなどを確認します。住民票・戸籍の附票で転居先を調べたり、訴訟記録や税務資料(源泉徴収票)で勤務先を把握します。SNSや知人を通じた情報収集もしておくと良いでしょう。

  • 資産状況の把握:給与債権や預貯金、不動産など差押え可能な財産を想定し、情報を集めます。勤務先名・金融機関口座・所有不動産の住所などを調査します。令和2年の民事執行法改正で、家庭裁判所を通じて相手方の預貯金口座や勤務先、不動産情報を取得できる手続きも利用可能です。

3. 話し合いによる解決

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4. 家庭裁判所への申し立て

5. 強制執行の手続(債権執行)

強制執行には「債権執行」を利用します。以下の要件・手続きをまとめます。

必要書類・要件 内容・備考
債務名義の正本 調停調書・審判書・和解調書・判決書・執行認諾付公正証書などのことです。これらは家庭裁判所や公証役場で交付を受けることができます。
執行文/確定証明書 判決書・和解調書・公正証書には執行文(執行できる証明)の付与が必要となります。。審判書の場合は確定証明書が必要です。
送達証明書 債務名義が債務者に正式送達されたことを証明する書類。まだ送達されていなければ、裁判所に送達申請し証明を取得します。
申立書 地方裁判所所定の「債権執行申立書」が必要です。所在地管轄は差押財産により異なり、給与・預貯金なら債務者住所地の地裁、不動産なら所在地の地裁です。
収入印紙・郵便切手 申立手数料は4,000円分の収入印紙が必要です。さらに申立て先の地裁所定額の郵便切手(第三債務者1名あたり約3,000円程度)を同封します。
第三債務者資格証明 差押対象が会社の給与や預貯金の場合、当該会社・金融機関の商業登記事項証明書または代表者事項証明書を添付します。
住所・氏名変更証明 債務名義記載と現住所氏名が異なる場合、住民票・戸籍附票などで両者のつながりを証明します。
  • 申立ての流れ:上記書類を揃えて裁判所に申立書を提出します(窓口でも郵送でも可)。不備がなければ裁判所は差押命令を発付します。

  • 差押効力:裁判所が差押命令を債務者および第三債務者(勤務先や金融機関)に送達した時点で、差押えの効力が発生します。給与の場合、手取りの2分の1までしか差し押さえできません。差押成立後、債務者は会社から給与を受け取れず、会社も債務者に支払えなくなります。

  • 取立て(回収):差押命令送達後1週間経過すれば、債権者は第三債務者(会社・銀行)から差押債権の回収を行えます。給与の場合は会社に連絡し支払方法を指示、預貯金なら金融機関に取り立て請求します。将来の給与も併せて差し押さえている場合、以後継続的に支払いを受けることができます。取立てに成功したら、裁判所へ取立届を提出して報告します。

  • 費用・期間:手数料は収入印紙4,000円、切手数千円程度。申立から命令発付までは通常数週間以上要し、命令送達から取立てまで合わせて数ヶ月かかる場合があります。勤務先や金融機関が支払いに応じない場合の対処策も検討が必要です。

6. 相談窓口・支援機関

    • 法テラス(日本司法支援センター):養育費問題の無料法律相談や、低所得者向けの弁護士費用立替制度(民事法律扶助)があります。不安な時はまず法テラスに電話相談しましょう。

    • 養育費等相談支援センター:子ども家庭庁が設置した相談窓口で、電話・メールで相談可能です。法律以外の相談も幅広く受け付けています。

    • 地方自治体・ひとり親家庭支援:市区町村の母子家庭等就業・自立支援センターや福祉課にも相談員が配置されており、養育費相談員に相談できます。公正証書作成支援や保証制度、各種福祉制度の案内もしてくれます。

    • 弁護士会・法律相談:各地の弁護士会が実施する無料法律相談や、信頼できる弁護士への相談も検討します。家庭裁判所の「家事相談」も、離婚・養育費に関する一般的な助言を受けられます。

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    7. 注意点

    • 時効に注意:前述のとおり、請求権の消滅時効に留意し、速やかに手続きを進めます。時効完成後は未払い分の請求ができなくなります。

    • 証拠保全:養育費の合意・支払いに関する証拠(公正証書・調停調書、銀行振込記録、給与明細、メール・LINEの記録など)はしっかり保存します。口頭約束だけでは強制執行できないため、証拠書類を整えておくことが重要です。

    • 記録の重視:履行勧告や差押え申立ての際には、申立人が扶養者であることを示す戸籍謄本などが必要です。また、手続の進行状況や相手の連絡先変遷は逐次メモします。

    • その他:相手が任意支払を再開する場合の手続(履行命令取消申立等)も視野に入れつつ、強制執行前に合意成立で手続終了できれば負担が減ります。また、手続中は感情的にならず、必要に応じて専門家の助言を仰ぐと良いでしょう。

    適切な手続きで養育費を受け取りましょう

    養育費は、子どもが安心して生活していくために不可欠なお金です。未払い養育費の回収には、専門的知識と手間が必要です。最新の制度や実務慣行を踏まえ、上記ステップを着実に進めることで回収の可能性を高めてください。本来養育費は、適切な手続きさえとれば、ほとんどの場合で養育費は確実に受け取ることができます。離婚したけれども養育費が支払われず悩んでいる方は、是非弁護士にご相談することをおすすめします。

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